1. 箇条書き項目いつもより、少しまったりとした画像になっていると思います。
    通常は、画像復元を行った後に、もう一段シャープネス処理を行うのですが、今回は行っていません。というのはシャープネス処理を行うと、画像復元による「偽(にせ)パターン」が現れてきたためです。常に同じ処理を行うのではなく、元画像の質によっては、ある段階で処理をストップすることも大切だと思います。

  2. 箇条書き項目かなりの枚数を撮影したのですが(L:10枚 R:10枚 G:10枚 B:9枚)、悪条件の日が続きました。
    南中高度も低いため、良い条件で撮影出来る時間も限られています。その結果、ほとんどの画像は薄雲を通しての撮影となり、ガイドエラーが多発、フラット補正が決まらないという状態から作業はスタートしました。おそらく星居Webギャラリーの中で一番処理に時間がかかった作品になったと思います。

  3. 1.ガンマフラット補正
    フラット補正が決まりません。周囲が明るくなってしまうのです。調べていくと、どうも薄雲を通して撮影した画像に現れるようです。この現象は、前から時々起こっていました。原因はハッキリとは掴めていませんが、バックグランドが明るいと、それが望遠鏡内部で乱反射を起こすためかと思います。それが原因だとすると、多かれ少なかれこの現象は常に起こっていることになり、根本的な解決が望まれます。

    解決策としては、フラット画像に適切なガンマ補正をかけてからフラット補正すると、ある程度成功します。この「適切なガンマ補正値」をどうにか自動取得できないかを一年ほど前からプログラム開発していましたが、良い結果が得られず、結局断念。今回、それを人間の眼で判断するスクリプトに改造しました。この方法で、不正フラット補正をある程度克服しましたが、オフアキのインナーミラーの影が残る場合があります。今回は、銀河なので良いですが、星雲などフレーム一杯に対象が広がっている場合は、これではまだ使えない技法です。
    *ここに上げた画像は、M8の例です。

         

                   <フラット補正がうまくいなかい例>

         

                 <上と同じ画像をガンマフラットで補正した結果>

    *ただし、全てのケースでうまくいくわけではなく、インナーミラーの影が消えない場合があります。
     上の例でもインナーミラーの影が残ってしまっています。


  4. 2.良画像の選択
    いままで良画像は、CCDInspectorを使って、FWHM、Aspect値などから数字で判断していました。しかし、今回は撮影条件も悪く、全てが悪い画像。その中から良いものを選ぶのはやはり人の目しかありません。よって、MaxImDLに全ての読み込み、一枚ずつ選択を行いました。

  5. 3.ガイド流れの補正
    マトリックス演算を使って、補正する方法もありますが、今回は、画像復元処理を使って行うことにしました。画像復元とは、どのように画像がブレているか?の情報を与えることによって、そのブレを無くす処理です。PSF(Point Spread Function)という関数でそのブレを定義してやり、それに則って、復元処理が行われます。PSFは、ある大きさを持った重み付け画像で、簡単に言えば、ぼけている星の画像になります。そこで、私が思ったのは、「ある方向に流れているPSFを作れたらガイドエラーの補正が出来るのではないか?」ということです。

      *実際の星像には、各種ジッターがあるので、理想的なPSFにはなりません。
       ですので、画像復元処理を行うソフトには、数学的な関数によって、PSF画像を作る機能があります。

    そんなソフトがないかといろいろ探していたら、以前、試用版を使ったことのあるPixInsightにたどり着きました。
    このソフトのPSF関数には、正円だけでなく細長い星像の画像を作ることが出来き、方向性も決められます。ということで、さっそく使ってみました。

    *参考リンク「直線的手ぶれ画像復元のためのPSFパラメータ推定手法(博士論文・卒業論文セッション)」



           

                <ステライメージでマルチバンドシャープをかけた状態>

           

                <PixInsight・Regularized Richardson-Lucy処理後>

    ガイド流れがほぼ解消されています。ガイドエラーに関して、この手法は今後有効になるのではないかと思います。

    また、画像復元処理自体も素晴らしく、背景のノイズが画像復元によって増幅さてていません。輝星の周りにも黒い縁取りがありません。Deringingと呼ばれる機能があって、画像復元につきもののこれらの問題点をキャンセルしてくれます。

  6. 4.星周囲の色にじみ
    RGBそれぞれで星の大きさが違うので、どうしても星像の周りにハローが現れます。これはある程度許容出来るものですが、しかしそのハローが「いびつ」になっていたら、もう目もあてられません。


  7. これはひどい!(ノイズリダクション前なのでカラーノイズも盛大)

  8. そこで、沢山の画像から一番良い星像のものを選び、輝星のみ置き換えるという処理を行いました。


  9. PixInsight
    上記処理の3.で出て来たPixInsightですが、今回初めて使いました。大変素晴らしソフトです。その可能性を簡単に述べると、革新的な機能を持つ画像処理プロセス、オブジェクト指向の処理方法、プレビューエリア、マルチプラットフォーム、APIの解放、アプリ内でのスクリプト使用が出来ることなど、上げていったらきりがありません。別枠で取り上げたいと思います。





  10. 箇条書き項目まだ、ガイドラーが完全にはとりきれていません。おそらくコンポジット前の画像に対して、最適なガイド流れ補正処理を行い、その後コンポジットする必要があるのだと思います。しかし、それは人が手動で行うにはあまりにも作業が膨大すぎます。MaxImDLやCCDStackに、ガイドエラー補正ルーチンを組み込む必要があるでしょう。しかしそれを自動でやるのは難しいだろうな〜。まあ、初めから良画像が取得出来ればなんの問題もないのですが...

 
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激しい銀河同志の衝突。

2つに伸びるガスの腕。一見すると、2つの銀河の動いた軌跡のように見えますが、実はこれ、2つの銀河が衝突した後に、その勢いではじき出されたそれぞれの銀河の内容物です。この腕が昆虫の触角のようにみえることから、触覚銀河とも呼ばれています。


2つの銀河の本体の間には、お互いの重力により、各銀河内の物質が引きずり出され、暗黒星雲が架け橋のように2つの銀河を繋いでいます。これだけ盛大に内容物がかき回された銀河では、星間物質が圧縮され、次々に星が生み出されているのでしょう。もう、一目見ただけでも、ただ事ではないことがわかりますね。密集したHa領域と、そこで生まれたのであろう若い青い星々。立派なスターバースト銀河です。





面白いのは、この2つの銀河の様子がまったく違うこと。NHC4039の方は、生まれたばかりの青い星で満たされているのに、NGC4038の方は、ほとんど星が見えません。2つの銀河の衝突による巨大な力がこうした瞬間をたまたま作っているのでしょう。 橋渡しをしている暗黒帯の中で生まれた星が、次々にNGC4039に流れ込んでいるようにみえます。宇宙の時間スケールから見ると、2つの水滴が衝突した瞬間に見せるのと同じような、一瞬の形状なのでしょうね。


後、10億年もすると、完全に合体が終了し、ごく普通の銀河の姿になると予想されています。