夜空にただよう雲のように...暗闇の中にとけ込む星雲。

この中心の星がなかったら、この分子雲には気づかないでしょう。

この恒星は、この暗黒星雲から生まれ出たものでしょうか、それともただ通り過ぎようとしている星なのかもしれません。どちらにせよ、この星からの光をガスが反射(散乱)させて青く見えています。中心星のスペクトルはB型なので、元々青白い光を放っていますが、レイリー散乱の効果も手伝っているのかもしれません。


B型スペクトルの星は青色巨星ですから、はげしい核融合で短い一生を終えます。それだけ強い恒星風が吹き出し、周りのガスに影響を与えているのがわかります。ところどころでガスが赤く光り出しています。ガスが電離し、ヘリウムの輝線で赤く光り始めているのでしょう。


圧力がかかることによって、ガスは圧縮され、やがてこの中から新しい恒星が誕生するかもしれません。 ところどころにグロビュールっぽいものも見えていますね。

また、この青色巨星の質量が充分に大きければ、ウォルフ・ライエ星となって、この星雲をすばらしく派手な領域に変える可能性もあります。




この星の南(視野の下側)には、不思議なガスの相似形があります。

濃いかたまりのガスと、ほぼ同じ形をした淡いガスが存在しています。この相似はなぜおきたのでしょうか? 偶然とは思えないのですが...


一番下側にある濃いガスのかたまりが、ある日突然すごいスピードで下に動き出した。急に動いたので、表層のガスがその場に残った...ようにも見えますが、真相はまったくわかりません。そんな動きをするハズないですからね...謎です。

 
  1. 箇条書き項目処理が困難な対象でした。
    前回のNGC4725での処理方針を生かし、対象(エリア)によって最適な処理方法を使って処理しました。

    <RGB画像>
    まず、カラー画像は、暗部をカットせずに、なるべく暗いところまで色を出すようにしました。通常はある程度のところでカットしてしまいますが、今回は、暗黒星雲を描出しなければならないので、低照度の色の変化も使う必要がありました。DDPをかけただけで、シャープネス処理はまったく行いません。NeatImageでSNを上げ、フォトショップでさらにノイズ低減フィルターを使っています。このフィルターのカラーノイズ低減のパーセントを大きくすると、ハローをある程度消すことが出来るので、重宝しています。今回の画像は、フラット補正の精度が悪く、下部のインナーミラー部に色むらが現れています。現在、「ガンマ補正フラット」プログラムを開発中で、これが出来ればこういう問題も起きないと思います。今回は、フォトショップでこれらを修正しています。
      


    <L画像>
    L画像は周辺の「暗い星雲のエリア」、「中間の明るさのエリア」、中心部の「充分に明るいエリア」、そして「星のエリア」に分け、それぞれに対して最適な処理を行っていきました。エリアを分けるマスクの作り方も重要ですが、ここではそれぞれのエリアの処理をどのような方針で行ったかを書きたいと思います。

  2. A.「暗い星雲のエリア」
    多少シャープネス(シーイング)が悪くても良いので、L画像のコンポジット枚数を増やしSNを稼ぎます。結局20分x11フレーム。暗黒星雲を描出するために、レンジは狭くします。暗部のリミットも低めにします。画像処理はDDPをかけるだけで、シャープネスフィルターなどは一切使いません。そうすることにより、SNを悪化させずにすみます。暗部のディティールはそんなに見えてこなくても構わないという考え方です。それでもレンジが500ADU程度しかないので、tiffに変換した後で、NeatImageでSNの改善をはかりました。DDPの時にはガンマ補正をかけて暗部を持ち上げています。
      


  3. B.「中間の明るさの星雲エリア」
    これには、シーイングの良かったシャープなL画像を6枚使いました。
    レンジは、暗部はでなくてもよいので、広く(1000ADU位)とります。これでSNが稼げます。そしてDDPの後にマルチバンドシャープなどのシャープ系フィルターをかけます。これも、NeatImageでSNの改善を行います。

  4. C.「充分に明るい星雲のエリア」
    Bと同じL画像を使います。レンジをもっと広げます(2000ADU位)。さらにSNが稼げます。もう暗部はまったく見えず、本当に明るいところだけを残す感じです。DDP、マルチバンドシャープをかけます。そしてその後に、さらにリチャードソンルーシー法を使って画像復元を行います。画像復元は高いSNを持った画像にしか使えませんので、レンジを大きくとっておくことが重要です。
      


  5. D.「星のエリア」
    星を別のエリアとして処理しないと、A.「暗い星のエリア」においては星が肥大化するし、B.C.のエリアでは、強いシャープフィルターや、復元処理により、星に黒縁が現れてしまいます。よって、星は別に処理します。
    星はノーマルな調整を加えたものと、フォトショップの「明るさの最小値フィルター」を使って星像を小さくしたものの2つを用意し、それをレイヤーでブレンディングさせて最適な星像の大きさ、シャープネスを調整します。一発で処理するのではなく、2レイヤーを使うことによって、調整の自由度が広がります。
    「明るさの最小値フィルター」は、簡単に星を小さくできますが、星雲を変形させてしまいます。波ガラスを通したような、おかしかなパターンを作ってしまいます。しかし、マスク使って星のみを使うので、このフィルターを使っても星像以外には悪影響を与えません。星マスクは、星像よりも数ピクセル大きくとります。よって、星の外側のバックグランドの明るさを他のレイヤーの画像と同輝度に調整してやる必要があります。そうしないと星のまわりにドーナツ状のパターンが見えてしまいます。
      


  6. 箇条書き項目その後、色調を強調しますが、輝度の高い部分ほど大きく色彩強調がかかるようにしています。暗部に色が激しくついているのは自然でないことと、SN的に厳しいためです。

 
more large sizeNGC7023_files/%40NGC7023-50X_Crop.jpg

もう少し視野を広げると、何かが星の光を遮って、影を落としているように見える場所があります。上下方向にだけ光りが漏れています。恒星の近辺に光を通さない高密度のチリがあるのでしょうか? もしかしたら原始惑星系円盤かもしれません。どちらにせよ、暗黒星雲の中に星があるのは間違いありません。 

  1. この光芒は、近くにある星の影響です。たった6.8等の星ですが、
    この画像の明るさのレベルではこのように大きな影響を与えてしまいます。