1. 箇条書き項目赤緯-20度を越える低空にあるため、条件の良い時に撮影するのが非常に難しい天体です。下のデータを見て貰うとその苦労の後がわかると思います。Rが3フレーム、Gが4フレーム、Bはなんと2フレームしか用意出来ませんでした。撮影日時もほぼ一年前(現在2008/09/05)、今年こそ追加で足りない画像を撮れるかと思ったのですが、まったく晴れず、あきらめて画像処理にいたりました。しかも冷却温度が−10℃の為ノイズが多く、なかなか大変な処理となりました。

  2. 箇条書き項目ノイズを極力減らすために、レンジ500のバージョンと、レンジ1500のバージョンを用意しました。暗いところにはレンジ1500を使ってノイズを減らし、明るい部分は、500の方を使って、これらをマスク合成してあります。

  3. 箇条書き項目中心部には、画像復元をかけた画像を用意し、それをマスク合成(輝度によるマスク)してあります。そして、50%の画像縮小をかけた後、再び輝度の高い部分にだけ、フォトショップCS3のスマートシャープをかけています。輝度の高い部分のマスクだけだと、星にもスマートシャープがかかってしまうので、星のマスクを別に作り、そこにはスマートシャープが作用しないようにしてあります。これらの処理によって、黒い筋状のガスが描出出来ました。ハッブル望遠鏡にはハッキリと沢山写っているディティールですね。(参考画像は、カラーバランスを整える前なので、緑っぽくなっています)


    <シャープ処理前>


    <シャープ処理後・筋状の黒いダストもハッキリとわかるようになりました>

  4. 箇条書き項目この作品もカラーバランスで悩みました。どうも、私のフィルター特性とCCD感度特性の為なのか、惑星状星雲の中心部が緑っぽくなってしまいます。そこで、RGB画像の感度というものをもう一度考え直してみました。
    RGB画像は、CCDの感度とフィルターの透過特性をかけたものになります。一般に天体画像のRGB合成では、RGB毎に特定の定数をかけて、ストレッチを行ってRGB合成を行います。しかし、これでは、このCCD感度グラフの傾きは補正されません。つまり、ストレッチをするだけでなく、傾きを補正しないとダメではないか?という考えに至りました。

    <CCD感度とフィルター感度を同じスケールに重ね合わせたグラフ/STL-11000MとSBIGのLRGBフィルター>

    感度の低い周波数の光は、RGBとして撮影される際には、低輝度の情報として記録されるのではないかと考えました。それを補正するには、つまり、低い輝度の部分を持ち上げてあげれば良いことになります。乱暴に考えれば、ガンマ適正をかけてあげればどうにか補正出来そうです。グラフの高さは、下準備段階のストレッチ(AutoStretch使用)で補正されてますから、傾きだけに着目すればよいことになります。

    グラフを見ると、ブルーのバンドの中に、急峻な場所があります。RとGはほぼ同じ調子、Gにはほぼ水平な場所があります。それを考慮すると、G<R<Bの順で、ガンマ補正を強くしてあげればうまくいくかもしれません。



    1番上がトーン補正前。2番目が作為的なトーンカーブ補正。星雲の中央部をカーソルでコントロール&クリック、キーポイントをうって、その部分を持ち上げてあります。しかし、このようにトーンカーブの一部を持ち上げると、色の連続性が崩れ、ありえない色がついてしまう恐れがありますね。3番目一番下が、今回の考え方でガンマ補正値の差で補正したものです。私としては、とてもスムーズな色変化、素直な発色になったと思います。

    今回は、この程度の精度で処理しました。まだ、グリーンが強いかもしれませんね。
    このカーブを決めているのは個人的な感覚です。これを【 フィルターバンド内のCCD感度xフィルター感度 】から正確な補正に近づける事ができないでしょうか? スペクトルが一度RGBに変換されてしまったら、そのスペクトル特性を補正するなんてことは困難でしょうが、もう少しチャレンジしてみたいと思います。

  5. 箇条書き項目もうすこし、露出時間をかけて、外縁部の暗い腕を写し出したいところです。天候が問題です。南天で、高々度にあるNGC7293を撮ってみたいです。

 

この惑星状星雲の一番の特徴は、非常に大きいことです。月の2/3位の大きさで見えています。少し前までは、全天で一番大きな惑星状星雲とされていましたが、2004年、 ろくぶんぎ座に「Hewett 1(ヒューイット ワン)」という10度x16度の驚異的な大きさの惑星状星雲が見つかり、その座を譲りました。


ただ、非常に暗い対象なので、肉眼で見ることは出来ません。もし、この星雲が明るく、肉眼でもこの画像のように見えていたら...と思うと恐ろしくなりますね。かなり異様な光景が夜空に広がることでしょう。さながら、夜空に浮かぶ「巨大な目」です。この星雲には、「神の目」という別名があるそうで、この想像は、あながち独りよがりのものではないかもしれません。


この惑星状星雲も他のものと同じように、大きな2つの球体が前後に重なっているように思えます。これは典型的な惑星状星雲の構造ですね。M97のページに3DCGで立体像を示しましたが、まさにあのように手前と奥方向に球形状のガスが重なっていると思われます。「らせん星雲」の別名がありますが、それは見かけの話しであり、実際には、このような形状だと思われます。



H 41‘3“ : 17%


しかし、ちょっと特徴的なのは、このガスの球体が幾十にも入れ子になっていることでしょう。

少し引いた画角で見ると、このことがハッキリとわかります。恒星が惑星状星雲になるまでの間に、何度かにわたって脈動をおこした為と思われます。



<中心部> H 10‘40“ : 50%


アップで見ると、その激しいガスの流れが見て取れます。

中心から尾を引くように伸びるいくつもの彗星のような構造。これがそのガスや恒星風の強さを物語っています。よく観察すると、励起していない黒っぽいガスも筋状になって、かすかに見えていますね。恒星のガスは、その成分から考えて励起して自ら光を出すと考えられるので、このダスト、もしかするとこの恒星が従えていた惑星の最後の姿かも?しれません。

 また、この放射状に伸びる彗星の尾のようなものが、中心の一点に収束していないのがわかるでしょか。それはこれらが3次元的な球状に分布していることを示していると思います。このベクトルを計測すれば、逆にそれが3次元的にどんな位置にあるのかも、計算出来そうですね。


興味は尽きません。

 
more large sizeNGC7293_files/%40NGC7293-50X-Tunne-Merged.jpg