はくちょう座に浮かぶ、カブトガニを下からみたような不思議な星雲。どうみても真ん中に脊柱が通っているように見えます。通称は三日月星雲ですが、CCDで撮った画像だと「カブトガニ星雲」の方が近いと思いませんか。


真ん中にあるのが、これらのガスを吹き出した星(WR136)です。バブル星雲(NGC7635)の中心星と同じウォルフ・ライエ星です。ウォルフ・ライエ星は、青色巨星で、自分の外層部分のガスを放出し、さらに自ら放つ紫外線で、その放出したガスを輝かせます。やがて超新星爆発を起こすのでしょうが、その時は、恒星深部のヘリウムを放出し、ブルーに光るガスをまき散らすのでしょう。


特徴的なのはこの浜辺に出来た波紋のような構造です。よく見ると立体的なムラになっている。本来ならバブル星雲のように綺麗な球状に拡がるはずだが、それがでこぼこになっています。広がっていく「力」にムラがあるのか、周囲にあったガスの「密度」にムラがあったためか、綺麗な表面になっていません。これは、どちらかというとカニ星雲のフィラメント形状と似ています。



<M1・カニ星雲>


私の持論からすると、広がっていくガスを、後から来た速いスピードを持つガスが追い越した時に、このよなパターンが生まれるのだと思うのですが... しかしこの写真には、そのような別の色のガスは写っていません。


しかし、下の写真を見てください。

 
  1. 箇条書き項目この作品は、天文ガイドに応募しました。しかし、見事落選。何かが足りなかったのでしょうね(苦笑)。
    応募する時、プリントアウトすると、いつもがっかりしてしまいます。色域が全く違うので、モニターの光感がまったく失われ、発色も悪くなってしまいます。多分に僕の印刷テクニックが悪いせいもあると思うのですが、プリントアウトのシステムを今一度考えねばならないかもしれません。

  2. 箇条書き項目Haフィルターを使って初めて撮った作品です。HaをRGBに対してどう使うかをいろいろ試行錯誤しました。今のところ僕が使っている方法は、RにHaを明るい方を優先で合成する方法です。ここで大事なのが、RとHaのレベルをきちんと合わせる必要があることです。そうしないと、Haがまったく加味されなかったり、逆に目立ちすぎるようになってしまいます。そのために、Ha,R,G,Bフィルターで撮った素材は、厳密にMin、Max値をもとめ、それが同じ値になるようにストレッチを行っています。つまり、画面に映っている一番明るい物を白であると仮定して、それぞれのレンジを併せてあげます。しかし、画面の中の最大光度の恒星が白であるとは限りません。そのほとんどがブルーに偏っている場合が多いです。よって、RGB合成をする際にあらためてその色相調整を行っています。このあたりの手法は、いずれTipsのコーナーで紹介したいと思います。

水素の赤いガスが、後から来た見えないガスに吹き飛ばされた跡のように見えます。

もしそのようなガスが存在していたとしたら、この星雲にフィラメント形状が存在していても納得がいくのですが...


そうしたらありました! その画像が! ー>OIIIフィルターで撮った参考画像へ
OIIIフィルターで撮った画像には、この赤い水素ガスの外側にちゃんと別のガスが写っているのです。僕のフィルターワークでも写るハズなんですが、相当薄いガスなんでしょうね。OIIIで見えるガスは酸素(緑)です。


だとしたら、水素ガス(赤)の後に酸素ガス(緑)が吹き出し、先行していた水素ガスを吹き飛ばしたのではないでしょうか。その結果、水素ガスの広がっていく層は攪乱され、フィラメント形状が生まれたのではないか...と想像するのですが。

more large sizeNGC6888_files/%40NGC6888%28Natural%29v03-Merge-50X-Tunned_1.jpg