最近の天文学の話題は、何にでも「暗黒」がつくものが多いですね。

暗黒物質、暗黒エネルギー、そして暗黒星雲。前の2者は、直接的な観測が出来ませんが、この画像にある暗黒星雲は、ちゃんと光りをあてれば散乱、反射し、その姿が浮かび上がります。ただ、この領域では、暗黒星雲の近傍に恒星がないので、シルエットとしてしか星雲の形が見えていません。そんなこともあり、今回の画像は、無理に暗部を出さずに、コントラスト高めに表現してみました。




この作品は、カラーバランスに悩みました。

何に悩んだかというと、どのように処理しても、全ての星の色が低波長の方向にシフトしてしまうのです。つまり、ブルーはブルグリーンに。イエローはオレンジ。オレンジは赤にといった具合。


「星間赤化」という言葉をご存じでしょうか。


星間にガスや塵が存在すると、星の光は、それらを通して見ることになります。

ガスや塵は、波長の短い光り(青)を散乱させますが、波長の長い光り(赤)はそれに比べ通過しやすく、結果、星のスペクトルが変化し、色が「赤化」することになります。これが「星間赤化」です。星間ガスの密度が高ければ高いほど、この傾向が強くなるのは言うまでもありません。


つまり、今回、すべての色相がシフトしているのは、この「星間赤化」のせいではなかろうか、と思うにいたりました。はくちょう座のこのあたりは天の川のまっただ中。天の川銀河の赤道面に沿っているわけですから、暗黒星雲ほどではないですが、ある程度のガスと塵が、一様に広がっていると思われます。つまり、 Aのように暗黒星雲の背後にある星はもちろんのこと、 暗黒星雲のないBの部分にもガスが広がっていて、星々を黄色くしていると思うのです。また、Cのような輝星の色が緑にシフトしている(緑の星なんてありませんからね)のも、この影響ではないかと思います。


撮影システムと画像処理を一定に保つことによって、このような真実に気づかされるというのは、とても興味深いことだと思います。これこそが、科学の第一歩。このような観察の仕方を大切にしていきたいと思います。


 


  1. 箇条書き項目例によってRGBには、Haを使っていません。しかしそれでも色の変化に乏しい画像になりました。青い星々が暗黒星雲から離れていて、その光りが届いていないためだと思います。

  2. 箇条書き項目今回、低輝度部の赤の変化をより精密にだしたかったので、AutoStretchに改良を加えました。
    今までは、RGBの中央値を会わせていましたが、最低値を使ってRGBを合わせるようにしました。これによって低輝度部の色再現性が上がったと思います。下記、比較画像をご覧ください。

       

    左が新方式、右が旧方式です。左の方が赤が単調になっていません。それぞれの画像情報ダイアログを見てください。新方式では、Minmun(1086.567,1086.280,1086.453)となり、最暗部のRGBが揃って色がついていません。右の旧方式では、Minum(1082.765,1086.289,1093.803)となっていて、少し青に転んでいることがわかります。

    多少、オレンジ、黄色方向に色がシフトしているように見えますが、これは、本文中でも書いたように、星間ガス+塵のせいではないかと思っています。まだ、いくつかの天体で検証する必要があるとは思いますが、今後はこのバージョンを使っていきたいと思います。ver1.2として、近々、ユーザーにみなさんにもリリースします。



 
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